資料のターゲットを「部門長」「取引先」「新入社員」まで決めても、何をどこまで説明すればよいか迷うことがあります。
その原因は、読み手の立場は分かっていても、知識、課題、不安、判断基準まで具体化できていないことです。
ペルソナ設定は、架空の人物プロフィールを細かく作るための作業ではありません。資料を読む中心人物を具体化し、情報の取捨選択や言葉選びの基準を作るための作業です。
この記事では、資料作成で使えるペルソナ設定を次の順番で解説します。
- ターゲットとペルソナの違い
- 資料作成に必要な設定項目
- 事実・仮説・確認を分ける作り方
- BtoB資料の具体例
- ペルソナを構成やスライドへ反映する方法
- AIを読み手役として使うプロンプト
まず結論:ペルソナ設定は「事実→仮説→確認」の3段階で作る

資料作成で使えるペルソナは、次の3段階で作ります。
- 事実を集める:ヒアリング、過去の質問、営業記録、問い合わせなどから、読み手について確認できる情報を集める
- 仮説を立てる:読み手が困っていること、不安、期待、判断基準を仮置きする
- 確認して資料へ反映する:本人や関係者へ確認し、メッセージ、構成、言葉、スライドへ変換する
大切なのは、詳しい人物像を作ることではなく、資料に入れる情報と削る情報を判断できる状態にすることです。
たとえば「新しい業務ツールの導入を判断する部門長」が中心人物なら、機能を網羅するより、導入効果、情報管理、現場負担、試験導入の条件を先に示した方が判断しやすくなります。
Who・What・Why、不満・不安・期待を1枚で整理できる無料PowerPointテンプレートです。
ターゲットとペルソナの違い

ターゲットとペルソナは、どちらも「誰に伝えるか」を考えるためのものですが、役割が異なります。
| 項目 | ターゲット | ペルソナ |
|---|---|---|
| 役割 | 対象となる範囲を決める | 中心となる読み手を具体化する |
| 例 | 業務効率化に関心がある管理職 | 効果は理解しているが、情報管理と現場負担を懸念する部門長 |
| 主な確認内容 | 立場、目的、読後の行動 | 知識、状況、課題、不安、期待、判断基準 |
| 資料への使い方 | 誰に何を伝えるか決める | 何をどの順番・言葉で伝えるか決める |
ターゲットが資料の向きを決めるなら、ペルソナは説明の解像度を上げる役割です。
先にWho・What・Whyを整理したい場合は、以下の記事から確認してください。
資料作成のターゲット設定方法|Who・What・Whyの決め方
ペルソナは細かい人物設定ではない
名前、年齢、趣味、家族構成などを増やしても、それが資料の判断に関係しなければ役立ちません。
たとえば社内提案資料なら、年齢よりも次の情報が重要です。
- テーマについて何を知っているか
- どんな責任を持っているか
- 何を成果として評価するか
- 何をリスクと考えるか
- 誰に説明・相談してから判断するか
研究メモ:項目を増やすことより、「この情報が資料のどこを変えるか」を説明できることが大切です。
資料作成で使えるペルソナ設定シート
次の項目を埋めると、資料作成に必要な読み手像を整理できます。
| 分類 | 設定する項目 | 資料へ反映する内容 |
|---|---|---|
| 基本 | 立場・役割・担当業務 | 前提説明の深さ、使う言葉 |
| 状況 | いつ・どこで・何のために読むか | 情報量、見せ方、資料の長さ |
| 知識 | すでに知っていること・知らないこと | 説明する内容、専門用語の扱い |
| 課題 | 今困っていること・解決したいこと | 冒頭の問題提起 |
| 不安 | 判断を止める懸念・反論 | 根拠、比較、リスク対策 |
| 期待 | 実現したい状態・得たい成果 | 効果、ベネフィット |
| 判断 | 重視する基準・関係者・決裁条件 | 構成順、必要なデータ |
| 行動 | 読後に取ってほしい判断・行動 | 結論、CTA、次のステップ |
以下の形式をコピーして使えます。
【資料作成用ペルソナ設定シート】
資料のテーマ:
中心となる読み手の立場・役割:
資料を読む場面・目的:
すでに知っていること:
まだ知らないこと:
今困っていること:
判断を止める不安・反論:
期待している結果:
判断で重視する基準:
判断に関わる人:
読後に取ってほしい行動:
事実として確認できた項目:
仮説のため確認が必要な項目:ペルソナ設定のやり方を5ステップで解説
STEP1:資料の目的とターゲットを確認する
最初に、資料で起こしたい成果と中心となる読み手を確認します。
- 誰に読んでもらうか
- 何を理解してほしいか
- 読後に何を判断・行動してほしいか
ここが曖昧なまま人物像を作ると、資料と関係のない設定が増えます。
例:
AI議事録ツールの限定導入について、部門長に効果とリスク対策を理解してもらい、1チームでの試験導入を承認してほしい。
STEP2:読み手について確認できる事実を集める
ペルソナを想像だけで作らないために、まず材料を集めます。
社内資料なら、次の情報が使えます。
- 本人や依頼者へのヒアリング
- 過去の会議で出た質問・反対意見
- 稟議やレビューで差し戻された理由
- 営業・サポート・問い合わせの記録
- 現在使っている手順や業務資料
- 利用部門のルールや評価指標
顧客向け資料の場合も、商談記録、問い合わせ、アンケート、利用状況など、実際の声や行動から始めます。
個人情報、顧客情報、社外秘は、管理ルールに従って取り扱ってください。生成AIへ入力する場合は、固有名詞や機密情報を除きます。
STEP3:課題・不安・期待を仮説として整理する
集めた事実から、読み手の状態を整理します。
- 課題:今、何に困っているか
- 不安:提案を受け入れにくい理由は何か
- 期待:実現したい状態は何か
- 判断基準:何が分かれば判断できるか
この段階では、確認できていない内容へ「仮説」「要確認」と付けます。
作り手に都合のよい人物像へ寄せないために、「なぜ賛成するか」だけでなく、「なぜ判断できないか」「なぜ反対するか」も考えます。
STEP4:中心人物と関係者を分ける
BtoBや社内資料では、担当者、利用者、評価者、決裁者が異なる場合があります。
全員を1人のペルソナへ混ぜると、関心事が多すぎて構成がぼやけます。まず、資料で最も重要な判断をする中心人物を1人決めます。
| 読み手 | 主な関心事 | 資料での扱い |
|---|---|---|
| 利用者 | 使いやすさ、作業負担 | 操作例、導入後の流れ |
| 担当者 | 実行可能性、準備工数 | スケジュール、役割分担 |
| 管理職 | 効果、費用、現場への影響 | 効果測定、費用対効果 |
| 決裁者 | 投資理由、リスク、責任 | 結論、根拠、リスク対策 |
資料全体は中心人物の判断基準に合わせ、ほかの関係者向けの情報は補足ページや別資料へ分けます。
担当者と決裁者の違いを詳しく整理する場合は、以下の記事も使えます。
STEP5:本人や関係者へ確認する
仮説を作ったら、可能な範囲で確認します。
「この提案に興味がありますか?」だけでは、相手が答えを合わせてしまうことがあります。実際の判断に近い質問へ変えましょう。
- 今の進め方で最も負担になっていることは何ですか
- この提案を判断する前に、何を確認したいですか
- どのような条件なら試してもよいですか
- 誰と相談して決めますか
- 過去に似た提案を見送った理由は何ですか
確認できなかった項目は、事実のように扱わず「仮説」のまま残します。
【具体例】AI議事録ツールを提案する資料のペルソナ

ここでは、社内でAI議事録ツールの試験導入を提案する例を使います。
以下は説明用の架空例です。実際の資料では、自社のヒアリングや記録に置き換えてください。
| 項目 | 記入例 | 状態 |
|---|---|---|
| 立場・役割 | 複数チームを管理し、試験導入を承認する部門長 | 事実 |
| 読む目的 | 導入効果とリスクを確認し、試すか判断する | 事実 |
| 知識 | 議事録作成に時間がかかることは把握している | 事実 |
| 課題 | 会議後の記録作成と確認に手間がかかっている | 事実 |
| 不安 | 情報漏えい、認識精度、現場の確認作業が増えること | 仮説・要確認 |
| 期待 | 会議後の作業を減らし、本来業務へ時間を使うこと | 仮説・要確認 |
| 判断基準 | 安全性、削減時間、導入範囲、検証方法 | 仮説・要確認 |
| 関係者 | 利用メンバー、情報システム部門、上位決裁者 | 事実 |
| 読後の行動 | 1チーム・期間限定の試験導入を承認する | 事実 |
この内容を1文にすると、次のようになります。
会議後の作業を減らしたい一方、情報管理と現場負担を懸念している部門長。全社導入ではなく、条件を限定して安全性と効果を検証できるなら試験導入を判断できる。
人物の経歴を細かく作らなくても、資料で答えるべきことが見えてきます。
作ったペルソナを資料構成へ反映する

ペルソナ設定は、シートを埋めて終わりではありません。読み手について分かったことを、資料の設計判断へ変換します。
先ほどの例なら、次のように反映できます。
| ペルソナから分かったこと | 資料へ反映する内容 |
|---|---|
| 会議後の作業が負担 | 冒頭で現状の作業時間と課題を示す |
| 情報管理が不安 | 利用範囲、データの扱い、禁止事項を示す |
| 精度を判断したい | 検証方法と合格基準を示す |
| 現場負担を増やしたくない | 導入手順と確認作業を示す |
| 全社導入は重い | 1チーム・期間限定の試験案を示す |
| 効果が分かれば判断できる | 削減時間と継続判断の条件を示す |
メッセージへ反映する
ペルソナの課題、不安、期待を踏まえ、資料全体のメインメッセージを一文にします。
全社導入を急がず、1チームで安全性と削減効果を検証すれば、リスクを抑えて導入可否を判断できます。
構成へ反映する
読み手の疑問へ答える順番にします。
- なぜ今、見直す必要があるのか
- どの業務を、どれだけ改善したいのか
- どのような方法で試すのか
- 情報管理や精度の不安へどう対応するのか
- 何を基準に継続・中止を判断するのか
- 今回、何を承認してほしいのか
言葉とスライドへ反映する
- 読み手が普段使う言葉へ置き換える
- すでに知っている説明は短くする
- 判断に必要な数字や比較を優先する
- 不安への回答を補足ではなく本編へ置く
- 1枚ごとに「読み手のどの疑問へ答えるか」を決める
資料作成全体を「設計→制作→検証」で進める方法は、基幹記事で確認できます。
伝わる資料の作り方|作成前の5ステップと完成後のチェック方法
AIをペルソナ設定と資料レビューに使う方法
AIは、実在する読み手の事実を知っているわけではありません。ペルソナを自動生成してもらうのではなく、仮説を広げる相手、確認質問を作る相手、資料をレビューする読み手役として使います。
社外秘、顧客情報、個人情報、未公開情報は入力しないでください。会社の生成AI利用ルールも確認します。
Prompt1:事実と仮説を分ける
以下は、資料を読む人について確認できている情報です。
資料の目的:[目的]
読み手の立場:[立場]
確認できている事実:[事実だけを書く]
読後に期待する行動:[判断・行動]
この情報から、資料を作る前に確認したい項目を整理してください。
1. 事実から直接分かること
2. 仮説として考えられる課題・不安・期待
3. 本人や関係者へ確認すべき質問
確認できていない内容を事実のように断定せず、必ず「仮説」と表示してください。Prompt2:読み手役として反論を出す
あなたは、以下の資料を読む[役職・立場]です。
資料の目的:[目的]
現在の課題:[課題]
気にしていること:[不安・判断基準]
提案内容:[提案]
この提案をすぐには承認しない立場から、次を挙げてください。
- 理解できない点
- 納得できない点
- 不足している根拠
- 判断前に確認したい質問
- 条件が変われば受け入れられる点Prompt3:資料への反映漏れを確認する
以下のペルソナ設定と資料構成を比較してください。
ペルソナ設定:[課題・不安・期待・判断基準・期待する行動]
資料構成:[見出しまたは各スライドのタイトル]
次の観点で確認してください。
1. 読み手の課題に答えているか
2. 不安や反論を放置していないか
3. 期待する結果につながる根拠があるか
4. 判断に不要な情報が多すぎないか
5. 最後の行動が明確か
不足項目を優先順位順に整理してください。AIの回答は読み手本人の意見ではありません。使えそうな仮説を選び、ヒアリングや実際の記録と照らして修正します。
ペルソナ設定でよくある失敗
1. 年齢や趣味を細かく決めて満足する
資料の判断に関係しない属性を増やしても、構成は改善しません。「その情報によって、資料の何が変わるか」を確認します。
2. 作り手の想像を事実として扱う
「きっと価格を気にする」「新しいものが苦手だろう」と決めつけると、読み手を誤解します。確認できない内容には「仮説」と付けます。
3. 担当者・利用者・決裁者を1人へ混ぜる
複数の役割を1人の人物像へ詰め込むと、資料の優先順位が崩れます。中心人物を決め、ほかの関係者は副次的な読み手として整理します。
4. ペルソナを作って資料へ反映しない
設定シートを作っただけでは資料は変わりません。課題を問題提起へ、不安を根拠とリスク対策へ、期待を効果へ変換します。
5. AIが作った人物像を正解にする
AIは与えられた情報から、ありそうな人物像を生成します。実際の読み手の事実とは限りません。AIは仮説出しとレビューに限定します。
ペルソナ設定のチェックリスト
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 資料の目的 | 読後に起こしたい判断・行動が明確か |
| 中心人物 | 最も重要な読み手を1人決めているか |
| 事実 | ヒアリングや記録から確認できる情報があるか |
| 仮説 | 未確認の内容へ「仮説」「要確認」と付けたか |
| 課題 | 読み手が現在困っていることを具体化したか |
| 不安 | 判断を止める懸念や反論を整理したか |
| 期待 | 読み手が得たい結果を言葉にしたか |
| 判断基準 | 何が分かれば判断できるか確認したか |
| 関係者 | 利用者・担当者・決裁者を混同していないか |
| 資料への反映 | メッセージ、構成、言葉、スライドを変えたか |
| 情報管理 | 個人情報・顧客情報・社外秘を適切に扱っているか |
曖昧な項目があれば、人物設定を増やす前に、本人や依頼者へ確認する質問へ変えます。
よくある質問
ペルソナは何人作ればよいですか?
まずは、資料で最も重要な判断をする中心人物を1人決めます。利用者や決裁者など複数の関係者がいる場合は、中心人物と分けて整理し、必要な情報を補足ページや別資料へ配置します。
名前や顔写真は必要ですか?
必須ではありません。チームで同じ人物像を共有しやすくなる場合だけ使います。実在人物の写真や個人情報を、本人の同意や社内ルールを確認せず使用しないでください。
読み手へ直接ヒアリングできない場合はどうしますか?
過去の質問、会議記録、問い合わせ、レビューの差し戻し、営業やサポート担当者への確認から材料を集めます。それでも分からない内容は、事実にせず仮説として残します。
ターゲット設定だけでは不十分ですか?
短い連絡や読み手が明確な資料では、ターゲット設定だけで足りる場合もあります。説明内容や判断条件を決めにくいときに、ペルソナ設定で読み手の状況を具体化します。
ChatGPTだけでペルソナを作れますか?
人物像の仮説や確認質問は作れますが、実際の読み手についての事実は作れません。固有情報を除いたうえで仮説出しに使い、本人や実際の記録で確認してください。
まとめ:ペルソナを「資料の判断基準」として使う
資料作成のペルソナ設定は、架空の人物を詳しく作ることが目的ではありません。
次の順番で進めます。
- 資料の目的とターゲットを確認する
- 読み手について確認できる事実を集める
- 課題・不安・期待を仮説として整理する
- 中心人物と関係者を分ける
- 本人や関係者へ確認する
- メッセージ、構成、言葉、スライドへ反映する
読み手が何を知り、何に困り、何が分かれば判断できるかが見えると、資料に入れる情報と削る情報を決めやすくなります。
まずは無料の要件整理テンプレートで、Who・What・Why、不満・不安・期待を1枚に書き出してください。そこから中心となる読み手を具体化すると、ペルソナ設定を資料へつなげやすくなります。
