資料作成で最初に決めるべきなのは、デザインでもスライド枚数でもありません。「誰に、何を伝え、どんな行動につなげるか」です。
ターゲット設定が曖昧なままPowerPointを開くと、情報は増えても判断基準がないため、内容がぼやけます。この記事では、資料を作り始める前に整理したい次の内容を解説します。
- Who:誰に伝えるか
- What:何を理解してほしいか
- Why:なぜ伝えるか・どんな行動を促すか
- 読み手の不満・不安・期待
- AIを使って読み手の本音や反論を深掘りする方法
まず結論:ターゲット設定は3ステップで整理する
資料作成のターゲット設定は、次の3ステップで整理できます。
- Whoを決める:資料を読んで判断する中心人物を具体化する
- WhatとWhyを決める:何を理解し、次に何をしてほしいかを言葉にする
- 不満・不安・期待を整理する:読み手が今困っていること、判断を止める懸念、実現したい未来を洗い出す
この3ステップが決まると、資料に入れる情報と削る情報の基準ができます。見た目を整える前に、まず資料の「心の設計図」を作ることが大切です。

Who・What・Whyと、不満・不安・期待を1枚で整理できる無料PowerPointテンプレートです。
資料作成でターゲット設定が重要な理由
深夜の静かな海底研究所。窓の外を泳ぐ小魚を眺めながら、資料を作る場面を想像してみてください。
いきなり「1枚目のスライド」から書き始めるのは、設計図なしで家を建て始めるようなものです。資料の目的は、きれいなスライドを作ることではありません。相手の頭というOSに、自分のアイデアという新しいアプリを正しくインストールしてもらうことです。
同じ内容でも、読み手が担当者なのか、部門長なのか、経営者なのかで、必要な説明は変わります。全員へ同じ情報を届けようとすると、結果として誰にも深く関係しない資料になりがちです。
ターゲットを絞るのは、ほかの人を切り捨てることではありません。まず「この人に判断してもらう」という中心人物を決め、必要に応じて周囲の関係者へ説明を広げるための設計です。
STEP1:Who|誰に伝えるかを具体化する
Whoは、年齢や職業だけを並べた人物像ではありません。資料の内容について、どんな立場で何を判断する人なのかまで考えます。
最低限、次の4点を整理しましょう。
- その資料を最も重要な立場で読む人は誰か
- その人は何を決める必要があるか
- テーマについて、どこまで知っているか
- 判断するときに重視する基準は何か
たとえば「社内の人」では広すぎます。「AI議事録ツールの試験導入を判断する部門長」まで具体化すると、費用、情報管理、現場への定着、導入効果といった必要な論点が見えてきます。
読み手が複数いる場合は、中心人物を1人決める
上司、担当者、利用者など、資料を読む人が複数いることもあります。その場合も、全員を同じ強さで狙わず、次の順序で整理します。
- 最終的に判断する人
- 判断へ影響を与える人
- 実際に利用・実行する人
資料全体は中心人物の判断基準に合わせ、ほかの関係者が必要とする情報は補足や別ページで扱うと、論点がぼやけません。
STEP2:What・Why|理解と行動を決める
Whoが決まったら、WhatとWhyを整理します。
- What:資料を読み終えたとき、何を理解してほしいか
- Why:なぜ伝えるのか、次にどんな判断や行動をしてほしいか
Whatを「AI議事録ツールについて説明する」と書くと、作り手の行為しか示していません。「限定導入なら、リスクを抑えながら効果を検証できると理解してほしい」とすると、読み手側の変化が明確になります。
Whyも「知ってもらう」で止めず、「1チームでの試験導入を承認してほしい」のように、資料を読んだ後の行動まで書きます。
WhatとWhyを1文へまとめる
次の型を使うと、資料のメインメッセージを作りやすくなります。
[Who]に、[What]を理解してもらい、[Why=判断・行動]につなげる。
例:
導入リスクを気にする部門長に、限定導入なら安全性と効果を検証できると理解してもらい、1チームでの試験導入の承認につなげる。
この1文から外れる情報は、本編に入れないか、補足へ回す候補です。
STEP3:読み手の不満・不安・期待を整理する
Who・What・Whyだけでも方向は決まります。ただし、読み手を動かすには、その人が置かれている状況をもう一段深く理解する必要があります。
不満:今、何に困っているか
不満は、読み手が現在感じている負担や停滞です。
- 作業に時間がかかる
- ミスや手戻りが多い
- 判断材料が足りない
- 関係者との認識が合わない
不満を具体化すると、資料の冒頭で何を問題として示すべきかが見えます。
不安:判断を止める懸念は何か
新しい提案を聞いた読み手は、同時に「失敗したらどうなるか」を考えます。
- 費用に見合う効果があるか
- 情報漏えいなどのリスクはないか
- 現場で使いこなせるか
- 導入後の責任や作業が増えないか
不安は邪魔な反論ではありません。読み手が安心して判断するために、資料内で答えるべき確認項目です。
期待:どんな状態を実現したいか
期待は、読み手が本当に得たい変化です。「便利になる」「効率化できる」だけでなく、その先の状態まで考えます。
- 会議後の作業を減らし、本来の業務へ時間を使える
- 判断のスピードが上がる
- チーム内の認識違いが減る
- リスクを抑えながら新しい方法を試せる
不満・不安・期待を並べると、「読み手にとって、なぜこの提案が必要なのか」を説明しやすくなります。
【実践】AIを読み手の練習相手として使う

読み手の立場を自分だけで想像すると、作り手に都合のよい答えへ寄りがちです。AIには資料を丸ごと作らせるのではなく、自分にない視点を持つ「読み手の代理人」として参加してもらいます。
社外秘、個人情報、未公開情報は入力しないでください。
Prompt1:読み手の本音を洗い出す
あなたは[読み手の立場]です。
現在、[読み手が置かれている状況]にあります。
[提案・説明したいテーマ]について説明を受けるときに感じる
「不満」「不安」「期待」を、それぞれ具体的に3つ挙げてください。
一般論ではなく、この立場の判断基準を反映してください。Prompt2:判断を止める質問を出す
あなたは[読み手の立場]で、まだ私の提案を信じていません。
提案内容:[ここに提案を書く]
承認・判断する前に確認したい質問を5つ挙げてください。
質問ごとに「なぜ確認が必要なのか」も説明してください。Prompt3:ターゲット要件を整理する
ここまでの内容をもとに、資料作成前の要件を整理してください。
- Who:中心となる読み手
- What:理解してほしいこと
- Why:促したい判断・行動
- 不満:現在困っていること
- 不安:判断を止める懸念
- 期待:実現したい状態
- メインメッセージ:上記を踏まえた1文
推測した内容には「要確認」と付けてください。AIの回答をそのまま正解にせず、実際のヒアリング、社内資料、過去の質問などと照らして修正します。
ターゲット設定の実践チェックリスト
資料を作り始める前に、次の項目を確認してください。
| 項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 中心となる読み手 | 最終的に判断する人を具体化できているか |
| What | 読後に理解してほしい内容が1文になっているか |
| Why | 読後に促したい判断・行動が明確か |
| 不満 | 読み手が現在困っていることを具体化できているか |
| 不安 | 判断を止める懸念に答える準備があるか |
| 期待 | 読み手が得たい変化を読み手の言葉で表せているか |
| 情報の取捨選択 | メインメッセージに関係しない情報を分けられているか |
ひとつでも曖昧な項目があれば、スライドを増やす前に読み手の情報を集め直します。
まとめ:明日の資料作成を「相手を知ること」から始めよう
資料作成は、自分の意見を一方的に押しつける作業ではありません。読み手の「困った」を整理し、判断できる状態へ案内するための設計です。
最初に整理するのは、次の3ステップです。
- Whoを決める
- WhatとWhyを決める
- 不満・不安・期待を整理する
「誰に届けたいか」という心の設計図が決まれば、資料へ入れる情報と削る情報の判断がしやすくなります。PowerPointを開く前の10分を、読み手の整理に使ってみてください。
